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逢魔降臨暦 Part.Ⅰ

獅子座の1等星レグルスが頭上に燦然と輝く夜。2人の青年が空を眺めながら静かに、口数は少なくもひとつずつ噛み締めながら言葉を交わし合う。

観測者はただ、予言を語るのみ。

これは、魔王になる運命を背負った、1人の少年の物語──。








◆魔王が生まれた日◆
この本によれば、2018年6月、普通の高校生 湯豆腐。
彼には、魔王にして時の王者、「オーマユドウフ」になる未来が待っていた。

彼は当時ランク140前後でりざれくしょん!に入団。
入団直後に私はこーひーに聞いた。「こんな低ランのいかにも弱そうなやつ入れて大丈夫なの?」と。
当然の疑問だ。全日10億団とはいえ毎日3300万稼ぐだけの戦力が無ければ話にならない。さすがに不安になるランクだった。

だが湯豆腐、いや、我が魔王は当時ゲームを開始してから2ヶ月と少しですでにゼノコロゥ剣の4凸を完成させていた。
このことに才能を見出され、入団を許可されたというわけだ。この頃はまだ誰も彼の運命に気付いていなかった…。


風古戦場を目前に控えていたこの頃、団員たちは順調にグリム琴、ラストストーム・ハープを集めていた。
我が魔王もその一人だった。
毎晩遅くまでグリームニルに通い、ザ・サンも、オールド・エッケザックスも無い状態でただただ戦い続ける彼を、誰もが無謀だと思っていた。

だが、



彼は、



やり遂げた。



祝え!全騎空士の力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者、その名も「騎空ライダー ユドウフ」!まさに生誕の瞬間である!



この日、この瞬間に私は確信した。
彼こそが我が魔王に違いない。いずれ全空を統べる覇者となる存在、「オーマユドウフ」になるべき選ばれし者!
故に私は彼の観測者となることを決めた。正しく魔王へと導くために。



だが、この時我が魔王にかけられたのは賞賛の声だけではなかった。



我が魔王はアカウントを作ってからしばらくは本格的にプレイせずに放置していた。よくある話だ。そこにつけ込み粗を探して叩こうとする。いつだってそうだ、自分に出来ないことを全て「不可能」だと決めつける。下郎、下がれ。貴様らごときが我が魔王を愚弄するなど、おこがましいにもほどがある。

だが、


観測者はただ、見守るのみ。


◆友◆
私は可能な限り我が魔王をサポートした。手伝ってほしいマルチがあれば駆けつけたし、編成や装備の相談にも答えた。

けれど当然ずっと付きっ切りというわけにはいかない。
彼自身に選択してもらうことにこそ意味があると考えた私は、私から率先してアドバイスを行うことはしなかった。
私はあくまで観測者に過ぎない。

そんな我が魔王が最も親しくしていた存在。彼の名はキャスパリーグ

同い年の彼らが打ち解け合うのは当然のことだった。我が魔王は団内では最年少、常に気を張りっぱなしだったろうからね。団外で、なおかつ同じ高校生であるキャスパリーグくんという存在は、我が魔王に大きな安心感を与えていたことだろう。

──キャスパリーグくんもまた、大きな"運命"に巻き込まれていくことになるとは、この時誰も知るよしもなかった。



◆「最高最善の魔王」◆
我が魔王の進化は止まらない。


自分の行く手を阻む者は誰であろうと許さない…それが私の知る魔王。
だがどうやら湯豆腐くんはその道には進まないつもりらしい。


常に最善を目指して突き進んでいく。
「最高最善の魔王になる」と宣言した。


そしてついに…


またひとつ、偉業を成し遂げた瞬間である!




◆予言◆
この本によれば、「オーマの日」、その日に"3つの力を受け継ぎし者"が時代を塗り替え新たなる王となる、と記されている。
そして「オーマの日」には獅子座の1等星 レグルスが最も輝いたとされている。

我が魔王の進化、偉業と呼応するかのようにレグルスが輝きを増し始め、いよいよオーマの日が近付いていた…




























「待っていたまえキャスパリーグくん、いや、"我が救世主"。」




後編へ続く──。