ぷらりのぷらぷらツープラトン

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逢魔降臨暦 Part.Final

前回





この本によれば、
獅子座の一等星 レグルスが最も強く輝く「オーマの日」、その日に魔王がこの地に降臨する…とある。

この空、ひいては魔王の"観測者"たる私ことぷらりと、魔王を歪めようと企むもう一人の"観測者" オワリエルは、各々のやり方で魔王を誘い、導いて行くのであった。

一方、魔王にして時の王者「オーマユドウフ」となる運命を背負った少年 湯豆腐は、「最高最善の魔王」を目指すべく己の信じる覇道を歩み続けていた。



それぞれの思惑はついに時間軸すらも巻き込み混迷を極め、激烈に、されども確実に、ひとつの答えへと向かいつつあるのであった……




◆偽りの「王」◆
ユドウフⅡの力を手に入れ、更に魔王へと近付いた我が魔王。
だが、「それ」は突然現れた…。




あろうことか、我が魔王になりすまし、我が魔王が通話やチャットで発言した内容をツイートし、時にはまるで自我を持っているかのように攻撃的なツイートを行い我が魔王の印象操作を行う悪質極まりないbot、その名も「湯豆腐bot」。

偽りの「王」の誕生である。

当然、これを良しとしない我が魔王は湯豆腐botとの戦いに赴く…


お互いの力は互角。
ユドウフⅡの未来予知能力は、湯豆腐botにも同様に扱える。
これでは決着がつかない…





そこへ、予想外の人物が介入した。

湯豆腐の友であったはずのキャスパリーグ。何やら様子がおかしい。

「ユドウフは俺が倒す。」




「変身。」

そこへどこからともなく現れたオワリエルが告げる。
「祝え!巨悪を駆逐し、新たな未来へ我らを導くイル・サルヴァトーレ。その名も騎空ライダーキャスパリバイブ。真の救世主がこの地に降り立った瞬間である!」

湯豆腐botへと攻撃を仕掛けるキャスパリバイブ。その身の赤い装甲で湯豆腐botの攻撃を容易く受け止め、重厚な一撃でダメージを与えていく。ユドウフⅡが苦戦する相手をいとも簡単に…?

圧倒的なキャスパリバイブの力の前に、湯豆腐botは一時退却した。
そして対面する湯豆腐とキャスパリーグ
「キャスパリーグ、どうして…?」
「お前と交わす言葉は無い。」

友であったはずのキャスパリーグが何故自分に敵意を向けるのか。
今はただ、戦うしかないのか…


未来予知でキャスパリバイブの動きを先回りするユドウフⅡ。このまま押し切れるかと思った矢先、

キンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!!!





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何が起きたのか理解できないユドウフⅡ。一瞬の間に連続で攻撃を受けたことだけはわかった。

キャスパリバイブが「剛烈」から「疾風」へとモードチェンジし、予知を上回る速度で行動したのだった。

たまらず必殺技 トゥワイスタイムブレークで反撃するユドウフⅡ。
だが決定打には至らず両者譲らない攻防が続く。

「待つんだ、我が魔王。そして、キャスパリーグくん。」

戦闘を止めたのは私だった。

◆確執◆
その場は撤退。しかし、必ず決着をつけることを誓い合った二人。
私は何故キャスパリーグくんが我が魔王を倒す決意を固めるに至ったのかを独自に調査していた。

その結果分かったのは…
オワリエルが裏で手を回していたということ。

奴はキャスパリーグくんと二人で話している間に巧みな話術で湯豆腐の本名を聞き出し、キャスパリーグくんから本名を聞いたと湯豆腐に伝えた。湯豆腐は激怒し、キャスパリーグくんに絶交を言い渡し、縁を切った。

だがこれこそが奴の企みの内だった。
絶妙なすれ違いとタイミングの操作を利用し、キャスパリーグくんからすればいきなり絶交を言い渡されたという状況へと導いたのだ。

「湯豆腐は君のことを友人だとは思っていないようだね。君があれだけ親しくしてきたにも関わらず、もはや利用価値がないと思ったらすぐに捨てるのさ。やはり最低最悪の魔王だよなぁ…?」

こうして湯豆腐に裏切られたと誤解したキャスパリーグくんは、魔王を打倒することを決意したのだった。
オワリエルの思惑通りに。



◆本音◆
これまで覇道を歩んできた我が魔王。
どんな困難も乗り越えてきた彼でも今回ばかりは精神的に辛いはずだ…。

だが彼は、決して弱音を吐かない。落ち込んだ様子も見せない。
そんな風に強がるのは他人に気を遣わせないための優しさゆえなのだと、私には分かっていた。

けれど…

本当の気持ちを伝えなければ、相手に心から向き合っているとは言えないのではないか。

それは私自身にも当てはまる。
今まで私は…湯豆腐という存在をただ見ているだけだった。
真摯に向き合おうともせずに、ただ眺めているだけの。
"観測者"が笑わせる。
私は…"傍観者"だ。

「…我が魔王、これまで君を見てきてひとつだけ後悔している事があるんだ。」
「ぷらりさんが…?」
「私は今までずっと、君を叱ったことがなかった。どこまで踏み込んでいいのか、きっと怖かったんだ。けれど…今、ちょうどいい機会だから初めて君を叱るよ。」
「…はい。」

「寂しいんだろう?キャスパリーグくんと絶交することになって。寂しい時ぐらい、大丈夫なんて言わないでちゃんと寂しいって言うんだ。寂しい時に寂しいって言えない人間なんて、人の痛みがわからない王様になってしまうよ。」
「ぷらりさん…ありがとうございます。僕、行ってきます!」

約束を果たすために、湯豆腐は急いだ。


道中待ち構えていた湯豆腐botの奇襲によりボロボロになりながらも約束の場所に向かう。

先に辿り着いたキャスパリーグは湯豆腐を待った。
「やはり居ない…ハッ、そんなもんか…。」

キャスパリバイブの力は絶大だが、使用には自身の身体を激しく損傷するリスクが伴うのだった。吐血やめまい、平衡感覚を失いながらも、それでも約束の地へと向かった彼は、やはり…



来るはずがないと思っていた湯豆腐が、ゆっくりとこちらへ歩いてきた。

「…ボロボロだな、ユドウフ。」
「そっちもね。」
湯豆腐は笑いながら答えた。

「なぜ、来た?」
「約束したからね。それに僕、今キャスパリーグと会える場所がここしかないから。」
「何…?」
「僕さ、キャスパリーグと出会うまで友達いなかったんだよね。」
「ふざけるな!俺はお前の友達なんかじゃない!これから決着をつけるんだぞ!?」
キャスパリーグが湯豆腐の首元に摑みかかる。湯豆腐は動じずに続けた。

「それでも構わないさ。以前言ったよね?僕。もし、僕がオーマユドウフになると確信したなら、その時はいつでも倒してくれ。キャスパリーグの判断なら、僕は信じられるから。」

「キャスパリーグは僕がオーマユドウフになるって確信したんだよね?」
「俺は…。」
揺らぐキャスパリーグ。そう、彼もまたまだ本音を言えずにいたのだ。
確信など無かった。オワリエルに利用され付け込まれたに過ぎない彼の本当の気持ちは──

その時、湯豆腐botが湯豆腐に襲いかかってきた。
「やっと見つけたぞ。お前はここで始末する!」
変身しておらず、おまけに消耗している状態の湯豆腐は抵抗が出来ない。
湯豆腐botが大きく腕を突き出してトドメをさそうとした瞬間…



キャスパリーグがその腕を掴んで止めた。
「何!?こいつはお前にとっても敵じゃないのか!?いずれ魔王になる男だぞ!」


「湯豆腐が魔王になるだと?そんなわけがあるかッ!!こいつは誰より優しく、誰より頼りになる男だ!!そして俺の…友達だ。」

ようやく言えた本当の想い。
二人は真に分かり合えたのだった。

「キャスパリーグ…」
「何をボサっとしてる!俺以外に倒されるなど許さんぞ!」
「…うん!」

「お前…血迷ったか?お前も、湯豆腐も、俺がまとめて倒してやる!」

湯豆腐とキャスパリーグは二人で湯豆腐botを迎え撃つ。
「「変身!!」」

「お前の未来が見える!」
ユドウフⅡが湯豆腐botの攻撃を予知した。

「キャスパリーグ、上だ!」
「ああ!」

キャスパリバイブは疾風モードへと切り替わると高速で湯豆腐botの移動先へと先回りする。


即座に剛烈モードへと切り替わり、強力な力で湯豆腐botを上空へと突き飛ばす。

「ユドウフ、決めろ!!」



こうして湯豆腐botは消滅した。
だが湯豆腐botの力を司る湯豆腐botウォッチは再生し、今もどこかで活動を続けているという…。



◆オーマの日◆
湯豆腐はオワリエルと対峙していた。
自身の目論見を打ち砕かれたオワリエルは何を思うのか。

「魔王、君と話すことはないよ。私の望んだ未来は訪れない。ならば、未来などいらない。」
「諦めないでください。勝手に未来を決めつけるなって言ってるんですよ。」
「…わかっているのかい?私は君の敵だよ?」
「わかってますよ。だから敵として、僕たちを苦しめればいい。僕たちはそれに負けないように戦いますから。」
湯豆腐がオワリエルに優しく笑いかけた。自分を苦しめた相手ですら受け入れる魔王としての器があった。


「これを使いこなせれば、私も認めよう…。」
「え?」


「行け、魔王よ。」

「はじめさん…。」
これが師弟の別れとなった。


そして、我が魔王が私と同じ団でいる時間も終わりを迎えようとしていた。
最高最善の魔王になるために、より強い団で己を磨きたいと私に伝えてきた。
止めるはずもないさ。

私は別れというものがどうも苦手でね。
まるで出会ってから今に至るまでの過程が全て無駄だったんじゃないかと、全て否定されるように思えてきて仕方ない。

でも今は、君と別れる辛さよりも、君を知らないまま生きていた方がどれだけ虚しかっただろうかと、そう思える。

君が最高最善の魔王になるその日を楽しみにしているよ。ずっと見守っているさ。

◆一等星になれなかった君へ◆
獅子座の一等星レグルスが頭上に燦然と輝く夜。二人の青年が空を眺めながら静かに、口数は少なくもひとつずつ噛み締めながら言葉を交わし合う。

私が先に口を開いた。
「今日この日が、新たなオーマの日となったようだね。」

「オーマの日、私と君のどちらかが消滅する運命にあった。君は君自身ではなく私を選んだ。なぜだい?」

オワリエルが静かに呟いた。

「今の私に仲間が?」
尋ねる私にオワリエルは頷く。

「あの魔王、いいね。気に入ったよ。彼なら面白い未来を作れそうだ。大事にするといい。」

当然さ、と含みを持たせて私は微笑んだ。

「そろそろ時間のようだ…」
オワリエルの体が粒子のように変化して空に吸い込まれるように消えていく。


彼はなぜこの時代に来たのか?
元々彼は「キャスパリバイブがユドウフⅡを打ち倒した場合に発生し得る未来」からやってきた存在だった。
キャスパリーグくんが我が魔王と共に歩む道を選んだ今、その可能性は潰え、それに伴いオワリエルの存在していた未来の時代も消滅した。
そしてその時代の住人であるオワリエルも今…

「やっと、私の望んだ未来が──。」

そうか。
そういうことだったのか。

彼は何度も時代を遡り、生まれ変わってやり直し続けてきたのだ。
自分が「本当に望む未来」を見届けるために。
そしてこの時代で、出会ったのだ。
自分が見たいと思えるような未来を作り出してくれる存在、湯豆腐に。
けれどその時には君はもう…。

私の頬を一筋の流星が熱い熱を伴って伝い落ちた。

「最期に…私と友達になってくれないか?」

「ハハ、君は本当に何もわかっていない。友達というのは、いつも側に居て支えてくれる存在のことだ。私たちのように離れていても同じ志を持つ者のことは…「仲間」と呼ぶんだよ。」


きっとまた会えるさ。
そうしたら今度は、友達になろう。



◆いつかどこかで◆
風有利古戦場が開催されていた。
我が魔王は支援もなしに個ランを狙うという無茶をしていた。

「相変わらず無茶をするね。」
「諦めの悪さは師匠譲りですからね。」
私たちは談笑する。

「僕ちょっと魔剤買いに行って来ますね。」
「ああ、それならオススメはピンク色のパイプラインパンチという味だよ。続々と売り切れているようだから急ぐといい。」
「わかりました!行ってきます。」




一人の青年が思い悩んでいた。
自分がなぜここに居るのか、なぜこの時代に…戻って来た?いやそんなはずは…。
何も思い出せない。自分が何者で、何をすべきなのか。

何か、大切な約束をした気がする。
何かを…。
ぼんやりとした足取りと霞がかかったような思考でゆっくりと歩いてみる。



光…?


向こう側から歩いて来た一人の少年を見て何かが微かに感じ取られた…

そして青年は、少年とすれ違う。








「おかえりなさい、師匠。」





先のことは誰にも分からない。
「運命」なんてものが仮にあったとして、既に何が起こるか決められているのだとしても、それを知る術を持たない私たちにとっては知らないのと同じことだ。

ただ、我々は未だに来ない友人に対して期待と親しみを込めてこう呼んだ。



「未来」と。


ーENDー