ぷらりのぷらぷらツープラトン

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転生しても皇族でいく。〜究極の英才教育を施された俺による異世界生活〜Part.Ⅰ

「究極お気持ち龍 レインボー・フォント・ドラゴンでダイレクトアタック!!」

「私の負けでございます…。」

3674戦3674勝0敗。それが俺と爺のデュエルの戦績だ。

「やはり悠仁様はお強い…」
「おい爺。」
「はい?」
爺は演技が下手だ。あるいは俺の洞察力を試しているのか。

「いい加減、わざと負けるのをやめろ。」
「滅相もございません!私は一切の加減もなく勝負に臨んでおりますゆえ!」
「ほう…?ならば…」

俺は爺の場に伏せられていたカードをめくり、その名を読み上げる。

「国家転覆。」
「…………。」
爺の顔に僅かに動揺の色が見える。
当然だ。

「俺が「国家総動員」で「愚民ソルジャー」を特殊召喚するタイミングでこれを使えばレインボー・フォント・ドラゴンの召喚を防げたはずだな?」

「大変申し訳ございませんでしたッ!!!!」
爺は諦めて己の罪を認めた。

「俺が嫌いなのは"負けること"だ。それが何であろうとも。だがな…それ以上に嫌いなのはッ!己が最善を尽くさずしてッ!他人に媚び諂う者のことだッッ──!!」

思わず声に力が入ってしまった。
直情的になりがちなのが俺の短所であると自覚せねばなるまいな。

「何卒御許しを!いかんせん私めのような老骨にはこのような新しい遊戯は些か難度が高いものですから…!」
「冗談!この期に及んで言い訳とはな!仮にも皇族抱え込みの従者である貴様が、主である俺に叛意を示すか?」

「ぐぅっ…ごっほごほッ…!」
爺は持病を患っている。臓器の病だとは聞いたことがあるが、自分のような老いぼれに暇も慈悲もどうか与えないでくれと言って治療を拒むのだ。こうして興奮すると激しく咳込む症状が現れる。

「俺は老人だろうと病人だろうと態度を改めるつもりはない。何故だと思う?」

「……"王族たる者、貴賎の分け隔てなくただ皆等しく「民」として接するべし"。」

「そうだ。幼子の時分より煩く俺に言い聞かせていたであろう?爺。」
「私に出来るのは…この身に備えた知恵と知識を分け与える事のみですゆえ…」

爺は俺が幼い頃から教育の任に就いていた。
俺だけでなく兄、姉、それ以前から変わらず働き続けてきた。
生まれた家によって人の生が決められるなど大概馬鹿馬鹿しいと思うが、俺も爺も望む・望まない以前に生き方を定められた人間。

「なればこそ、俺は腹立たしいのだ。お前を一人の"民"として、否、俺の従者として評価しているからこそ、だ。」
悠仁様…」

「罰を与える。いいな?」
「謹んで承ります…。」



爺と俺はリムジンに乗り込み郊外へと移動を開始した。
これから与える"罰"の為だ。

窓の外の風景を眺める。
しかし庶民というのは本当に度し難い。
何故このように忙しなく歩き、走り、往来を巡るのか?その様はいつ見ても焦り、疲弊、悲嘆に満ちている。
誰もが幸福を望んでいるはずなのに、何故誰もがそれを得られるとは限らないのだろうと、常々疑問に思うのは甚だ可笑しい話ではないか。

「…学校はどのような様子ですか?」
爺が口を開いた。爺は俺の学校生活が気掛かりでならないようで事あるごとにこうして尋ねてくるのだった。

「何ら変わりない。相も変わらず接するに値しない愚か者ばかり…。」
「お言葉ですが悠仁様と他のご学友とでは育った環境、これまでに受けた教育に幾分と差があるのは致し方ないかと…」
「そうではない、そうでは。こちらから接するのはな…分かるであろう?」
「……御許しを。」

自分から話を切り出しておいて情けないやつだ。

先程も述べたが、生まれた家で人の生が決まるなど馬鹿馬鹿しいと俺は思う。
同じ年に生まれ、同じ街に住んで、同じ学校に通う。違うのは生まれた家だ。

それだけで────
全て違うと決められる。



「到着しました。」
「御苦労。」

爺がドアを開き、俺は地面を踏み締めた。


郊外にある我が一族の私有地。
誰も立ち入る事は無く、豊かな自然を有する土地。
その更に奥深く、俺のお気に入りの場所がある。


切り立った傾斜のある小さな崖。
その上から眺める景色が俺は何より好きだ。
さほどの高さは無いのだが、この場所に立って風の流れに身を包まれる時、世俗から解き放たれただ一人の人間になれた気がするのだ。我ながら年相応な所があるなと思う。
側から見れば、高い所に立って喜んでいるだけの少年にしか映らないのだから。
その崖、というか壁の下で爺は待機している。俺は崖の上から爺を見下ろす形だ。


「始めろ。」
「ハッ…!」

爺は纏っているスーツを脱ぎ始める。
その下のシャツも、パンツも。そうして瞬く間に全裸になる。
これから始まる罰に備えての支度だ。








"ぷらぷらプランク"




それがこの罰の名だ。
プランク、それは体幹を鍛えるトレーニングの一種である。うつ伏せになり、肘をつき、両手両足を肩幅に開いた状態で肘とつま先に重点を置き、その姿勢を保つ。一見簡単そうに見えるが平均的な成人でも40、いや、20秒足らずで腹部が刺激でプルプルと震えるのを感じるであろう。

通常のプランクと異なる点として、これを全裸で行う。制限時間は3分間だ。
3分間耐え忍べば爺の勝ちとなりペナルティは免れる。(ペナルティは減給、残業等業務的な制裁が与えられる。)
ただし俺はあらゆる妨害を行う。
更にもう一つルールがある。



"地面にちんちんが着いた秒数に応じてペナルティを与える"



実質腹いせのようなものだが。


「フッ…!」
爺は凡そ病を抱える老人とは思えぬほどの筋肉を蓄えた立派な体つきで、まるで意に介さずに3分間耐え忍ぶのでは無かろうかと思えるほどに容易く姿勢を維持している。

そもそも地面にちんちんが着きさえしなければペナルティにはならないのだから、小休止を挟めば幾らでもやりようはあるのだ。罰としては緩い方であろう。

「爺、人間の偉さは何で決まると思う?」
「……!?」

爺は俺が何をしようとしているのかを察したようだが、もう遅い。

「人間の偉さとは…その立つ"場所"によって決まるッ!!」
俺は勢い良く駆け出した。

悠仁様!!なりませんッッ───!!」

「俺は"上"でッッ!!!!お前は"下"だァッッ!!爺ッッ──!!!!」

俺は眼下の爺目掛けて飛び降りながら蹴りの姿勢を取る。
以前見た庶民の娯楽、特撮ヒーローの必殺技が妙に気に入り、いつか機会に恵まれた暁には是非繰り出してみたいと思っていたのだ。

風を切る

姿勢が崩れる

爺の慌てふためく顔

後頭部への 強い 衝撃




つまんねー世界


つまんねーカタチの雲


つまんねー色の空


いつも見下ろしていた爺を、今は俺が見上げているのだけは、




少し、おもしれー……………




俺のこの世界での記憶は、命はここで途絶えた。


To Be Continued…